宇宙服なし、私服で宇宙というガチのカジュアル
こんばんは、小鹿です。
今回は、私服で宇宙に出たらどうなるか?
~についてお話します。
地上から約410km上空の宇宙空間には
国際宇宙ステーションがありますよね。
410kmはどれくらいの高さかと言いますと
↓
◆富士山108個分の高さ
◆エベレスト46個分の高さ
◆平面距離にすれば
・東京~仙台
・大阪~横浜
・萩~鹿児島
といったところです、感じつかめましたか?
そんなところに国際宇宙ステーションが運用中です。
国際宇宙ステーション(ISS)
質量34,4トン 全長73m 巡航速度 毎秒8km/s
画像:NASA提供
なにげに巡航速度:毎秒8km/sってすごいですよね?
マッハ23です(^ ^;)
1日、地球を16周します。
もっとゆっくり回ったほうが正確な標本採取や
写真撮影もしやすいだろうに…と思いますよね。
なぜこんなに速いのか?
それは、第一宇宙速度と言って、
衛星軌道に乗せておくにはこの速度でなきゃマズいんです、
この速度を下回れば、徐々に地球に落ちてしまうんですね。
これから益々、機器や設備の進歩により、
宇宙ステーション収容人数も増え、
将来的には学生の宇宙ステーション短期留学や研修も
普通に実施される時代になると思います。
もっと進めば、企業も宇宙ステーションに進出し、
店舗も入ったりと、本格的な長期滞在もありえるでしょう。
その頃には、宇宙ステーションの中では、
私服で過ごせる環境になっているでしょうね。
そうなると、まず思い浮かぶのは、
↓
●設備の誤作動により
●何かの事故などで
●ケンカなど激昂した相手に突き飛ばされて
●酔った勢いで
↓
人が宇宙空間に飛び出る…というトラブル、
それは有り得ることです。
今回は、もし丸腰でそんな突発事態が起こったら…
を前提に考えてゆきます。
丸腰で真空(しんくう)に飛び出すとどうなる?
宇宙空間、息を吐くことも吸うことも難しいです。
なぜなのか?それは空気がないからではなく「気圧0」だからです。
息を吸おうとして口を開けると、
肺にたまった空気が、なんと宇宙空間に吸い出されます。
吸おうと頑張っても、逆に吸われてしまうんです。
ここはひじょうに分かりにくいと思うんですが
わたし達が普段、この地上で呼吸をする際、
横隔膜を下げ、胸を膨らませて、肺の気圧を外よりも下げ、
その気圧差を利用して肺に空気を流入させているんです。
吸う力で空気を入れてるんじゃなかったんですね、
気圧差を作って入れてたんです。
宇宙空間で口を開ければ、どんどん肺の空気を宇宙に吸われてしまう。
そして肺は徐々にペチャンコになってゆき、
肺や気管の損傷で死に至ります。最悪の場合、破裂します。
では宇宙服なし・酸素ボンベ有りではどうか?
酸素ボンベをつけてみます
宇宙は平均してマイナス270℃です。
寒いというよりも「温度がない」と言った方が正しい。
体温を保持するための空気がないのです。
マイナス270℃だと、
すぐカチカチに凍結する……と思いましたか?
いえ、宇宙では体温を外に伝播させる空気がないため、
体が凍結するまで相当な時間がかかります。
人間の体温は、徐々にゆっくり下がるだけで、
冷たい…という感覚も最初のうちはありません。
宇宙の温度に、長時間かけて同化してゆく感じ。
しかし皮膚表面の水分が蒸発し続けます、
それにより気化熱が奪われ、凍えて気を失い、
最後は時間かけて体内の水分も蒸発し、
最後はミイラ化して死に至る可能性が高いです。
宇宙放射線を受ける
宇宙放射線は大きく分けて3種あり…
◆1.捕捉放射線 Trapped Particle Rays
地球磁場によって捉えられた銀河放射線。
地球周囲のヴァン・アレン帯で飛び回っている
陽子線・電子線メインの放射線。
宇宙服なしなら、人体への影響は中~大。
ヴァン・アレン帯を観測する2つの衛星▼
▲ドーナツやベーグルのような形を
分かりやすく、一部 輪切りにした絵
画像:ロス・アラモス研究所
https://www.lanl.gov/discover/news-release-archive/2017/March/03.20-less-radiation-in-van-allen-belt.php
2つの人工衛星の一つ、NASAのVAN ALLEN PROBE
(ヴァン・アレン・プローブの写真)▼
そしてもう一つは日本の、
ヴァン・アレン帯観測衛星あらせ
電子エネルギーの観測を行っているイメージ▼
◆2.銀河放射線 Galactic Cosmic Rays
放射線の密度が薄い反面、その中に鉄の重粒子が混入しており
それが致命的な損傷となる、宇宙服なしだと人体への被害は大。
右上の茶色い矢印「銀河宇宙線」と書かれているのが
銀河放射線です。
画像:理科年表オフィシャルサイト
https://www.rikanenpyo.jp/FAQ/seibutsu/faq_sei_003.html
◆3.太陽放射線 Soler Particle Rays
突発的に起こる太陽面爆発(太陽フレア)によるコロナの質量放出。
核融合そのものの放射線で、人体への影響は甚大。
宇宙服なしなら100%即死。宇宙服着てても放射線被爆レベルは特大のため、
アラート発報のとき、国際ステーション乗務員は遮蔽ルームに退避します。
宇宙服なしで宇宙遊泳していた場合、
太陽面爆発がその人の向き合ってる面で起きれば、
その時間に浴びる放射線は通常の数千倍~1万倍です。
▲画像は小規模な太陽面爆発(太陽フレア)
この規模は1日に2~3回発生している
この太陽フレアによって起こる太陽風、
太陽風が有害な放射線と電磁波を運びます。
その更に巨大なものが太陽嵐(たいようあらし)と呼ばれます。
銀河放射線と同じく、この中にも鉄の重粒子が混ざっており、被害は甚大。
もちろん中性子も飛び出します。
太陽風・太陽嵐の監視をおこなっているのが、
アメリカ航空宇宙局の探査機ACEです。
▼Andrej Mirecki 氏によるイメージ画像
備考:探査機ACE、太陽風と太陽粒子の監視
1997年運用開始、2024年終了予定
そしてこちらも太陽風観測探査機
Parker Solar Probe(パーカーソーラープローブ)
PHOTO by: APL/NASA GSFC
*2018年8月より運用開始
巡航速度:毎秒192kmは
冒頭で紹介した国際宇宙ステーションISSの24倍。
ちなみに…
●中規模の太陽フレアによる太陽風の威力
(10数年に1度起こる。この規模だと「太陽嵐」と呼ばれる)
水爆1,000万個以上
原爆10億個以上
●小規模の太陽フレアによる太陽風の威力
(毎日2~3回ある)
水爆10万個以上
原爆1,000万個以上
地球が受けた過去の被害例
最大の太陽嵐
1859年の太陽嵐(Solar storm of 1859)
この1859年の太陽嵐はスーパーフレアとも呼ばれ、
観測史上最大の太陽嵐です。
160年たった今でもそれを超えるものは起きていません。
オーロラは通常、北極圏や南極でしか見られませんが
1859年のスーパーフレアの際、
オーロラはなんと、キューバ・ジャマイカ・プエルトリコなど
カリブ海でも見られました。
上記、大規模太陽嵐は今に至るまで一度しか起きておらず、
その他は中規模なものです。
中規模以上の太陽嵐は数年に又がって起きます。
★中規模の太陽嵐が起こったのは
・1872年周辺
・1892年周辺
・1909年周辺
・1921年周辺
・1938年周辺
・1946年周辺
・1958年周辺
・1973年周辺
・1989年周辺
・2001年周辺
・2012年周辺
~平均すると、12年半の周期で発生しています。
しかしこれらは、1859年の大規模太陽嵐に比べて、
すべて半分以下の規模でした。
太陽嵐が起きた場合、付近の宇宙空間には
↓
①X線・ガンマ線等の電磁波が到達
②中性子線など超有害放射線が到達
③コロナ質量放出による有害重粒子が到達
↓
太陽嵐の発生面と向き合っていた場合、
宇宙服を着て遊泳していても助かりません。
また地球上では…
↓
・発電所と送電システムが故障
・広範囲な停電が発生
・人工衛星の故障・トラブル・寿命減衰
・無線通信の障害(特に旅客機など)
・国際宇宙ステーション被曝
などが実際に起きています。
まとめ
私服で宇宙空間に飛び出した場合、
◆酸素ボンベなしの場合
気圧差により、肺の空気はすべて宇宙に吸われる。
肺や気管はペチャンコになるか破裂してしまう。
◆酸素ボンベありの場合
徐々に体温低下で死亡するか、
銀河放射線や太陽放射線によって致命的損傷。
特に太陽面爆発(太陽フレア)による太陽風を浴びれば
それが小規模な太陽フレアであっても、
↓
あなたが宇宙空間に飛び出していれば
宇宙服を着ていても即死となる。