SF小説「広島へ帰る前に」第4巻(最終回)

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 落ちてくるリトルボーイ


このSF小説は連続ものです、
初めての人は、第1巻からお読み下さい (•̀ᴗ•́)و
   ↓
広島へ帰る前に:第1巻

第1巻を読んだ人は、第2巻からどうぞ
   ↓
広島へ帰る前に:第2巻


第3巻がまだの人はここをクリック
   ↓
広島へ帰る前に:第3巻

  第4巻(最終回)


6時半に目が覚めた。。
今日は広島原爆記念日だったな。


今日かも知れない、
紺野君のおじいさんとマネキンが入れ替わるのは・・。


朝8時を過ぎている。
もう広島に着いているかな?紺野君に電話をしてみよう。




「もしもし・・城戸だけど、おはよう、
 朝早くからゴメンなあ。」


すると紺野君は

「全然起きてますよ~!
 ついさっき広島に着きました。」




オレ
「そうかあ、どう? 広島は暑い?」


紺野君
「いやあ、名古屋の方が断然暑いと思いますよぉ~。
けど城戸さん、さっきから不思議なんですよね~・・」




オレ
「ン・・? 何が?」

紺野君
「景色がおかしいんですよ」

オレ
「どんな風におかしいの?」

紺野君
「原爆ドームって知ってますよね?」

オレ
「うん、知ってるよー、
元は “産業奨励館” って建物だったらしいね。
原爆で屋根が吹っ飛んで、原爆ドームになったんだろ?
 世界遺産の…。」




紺野君
「それです。広島のシンボルですよね。
あれは、上半分が骨組みだけのハズですよねぇ・・、
 ・・、けど今日は違うんです。」

オレ
「今日は違う・・って、どう違うのかね?」

紺野君
「ちゃんと丸い屋根がある、綺麗な丸い屋根がついてますよ」

 


オレ
「それ、原爆ドームじゃないのでは? 場所を間違えてない?」


紺野君
「いえいえ、子供の頃から原爆ドームのそばで遊びましたし、
場所はここで間違いありませんよ。」


オレ
「そういやあ、世界遺産だから勝手に改修しちゃだめだし、
 そんな歴史的・・、 (オレは変な予感がした)
 なあ紺野君、道を歩いてる人は、どんな格好だい?」


紺野君
「さっきは、モンペ姿の若い女の子や、
 軍帽かぶった子供や大人ばかり歩いてましたよ。
 国防色の上着とか・・まるで戦時中のファッションでした。





今日はコスプレ大会なのかな?って思いましたよ、
…でも今は普通に、今風のファッションに戻ってます。


 あッ、き、城戸さん、ドームの丸い屋根が消えてる!
 いつもの原爆ドームの姿に戻ってます、
 例の、骨組みだけの屋根ですよ。
 今日は僕の目がおかしいのかな?・・


 あ、あれ!?またモンペ姿や軍服の人たちが歩いてる!
 それに、原爆ドームがまた丸い屋根をかぶってる、
 一体どうなってるの!?」




オレはハッと気が付いて、部屋のマネキン人形に目をやった。
マネキンは、消えかけたり、姿を現したり、
まるで幽霊のように不安定な状況だった。


そして紺野君の方もおかしい、
彼が観る景色は、戦時中と現代が、コロコロと入れ替わってる。


なぜなんだ?
ひょっとして、紺野君とマネキン人形がそっくりだから、
タイムマシンがどちらをタイムスリップさせるか、
迷っているのか???




下手すると、2体とも広島へ行くか
運悪いと紺野君だけ行ってしまうかも知れない。


オレは部屋の時計を見た、8時12分だった。
原爆投下は、確か8時15分だ。
急いで山の方へ逃げろ!!・・と言いたかったが、
今さら間に合わない。


「城戸さん、いま景色や人の姿がコロコロ変わってます。
 原爆ドームも、丸い屋根が現れたり、消えたり・・
 僕の目がおかしいんですか?」




オレ
「それ以外には? そうだ!空に何か飛んで来たか?」


紺野君
「見たことない、大きな飛行機が見える、
 広島中心部めがけて飛んで来ます。」


オレ
「大きな?…それは旅客機?」


紺野君
「違いますね、全身が銀色の飛行機。
旅客機より小さいけど、細長い銀色のやつです。」




オレ
「そうか・・分かった。」
(とうとう来たか、エノラゲイだ、
なんとかしなきゃ、もう8時15分になろうとしてる)


「そのほか、空に何か変わった様子はないか?」


紺野君
「街にサイレンが鳴り出しましたよ。
 昔の空襲警報みたいな・・
 あっ、その飛行機が何か落としたっ!」




オレ
「行かないで、紺野君!」・・他に言葉が出てこない。

紺野君
「え?どこへっすか?」

オレ
「そうだ、紺野君、おととい祭りの夜店で買った、
お面のみやげ、持ってる? 信長のお面!」




紺野君
「持ってきてますよ」

オレ
「頼む!お面を急いでカブってくれ!命に関わる問題だ!」




紺野君
「お面をカブる?なんでです?
あっ、空がオレンジ色に光ってますよ」

オレ
「頼む!理由は後だ、命がかかってる、今すぐカブれ!」

紺野君
「まぶしい!すごくまぶしいです!前が見れないっ!」

 


・・そこで電話が切れた。


電話を何度も掛け直してみたが、
圏外通知のアナウンスが聞こえるだけだった。
しかし仕事開始の時間なので、オレは工場の持ち場へと歩いた。


仕事を放り出してでも、紺野君と連絡を取りたい、
いやいっそ広島へ飛んで行きたいんだが、


ディズニーシーとディズニーランドからの
急ぎのマネキン注文があったので、
強制的に頭のチャンネルを切り替え、
仕事に取り掛からねばならなかった。




午前中の10分休憩も、昼休みも、紺野君に電話したが、つながらない。
昼ごはんは、味がしなかった。料理は残して、コーヒーをすすった。


仕事が終わり、夕方の帰り道をうなだれて歩いていると、
誰かから電話が掛かってきた。


「城戸さん、すんませ~ん。」

 ~おぉー紺野君の声だ、生きてる!


「どうした?心配してたぞ!」…とオレ。




紺野君
「あの時、携帯の電池が切れたんですよ、
 おまけに充電池は名古屋に忘れてたんです~、
…で、おばあさんと式典に行って、
 その帰りに携帯Shopで充電池を買ってきました~。」


オレ
「そっかそっか、・・で、どう?
あれから外の景色や歩いてる人や、ドームの屋根は?」


紺野君
「もうあれから景色も人も正常ですよ~(笑)
ドームも屋根なしのままです。

 あ、お面はとっくに外しましたよお~(笑)
 まぶしかったんで急いでお面かぶりました!」


オレ
「アハハ! いいよいいよ、とにかく元気で良かった。。」




これほど安心したのは人生で初じゃないだろうか?
電話を終えて、オレは再びアパートに帰ろうとした、
そこでオレは、ハッと気が付いた。


   マネキンはどうなってる?


部屋へ走って駆け込んでみた。


~マネキン人形は消えていた。


その代わりに、紺野君とそっくりな20歳くらいの若者が、
不安そうな表情で部屋に座っていた。




それが誰なのか分かった。


オレ
「初めまして、紺野君のおじい・・いや紺野さんですね?」


青年
「はい、紺野と申します、ここはどこでしょうか?
空襲警報が鳴り、まぶしく光った…と思った瞬間、
 気が付いたらここに居たのです。」


オレ
「ここは愛知県名古屋市です。」


青年
「名古屋・・?え・・あ・あの、どうして僕がここに・・?」


オレ
「話せば長いんです。
何か食べながら話しましょう。
ファミレ・・いや食堂に行きましょう、おごりますから。
食べながら、詳しく説明したいと思います。」

 


60年以上も未来にタイムスリップした過去からの来訪者は、
道行く自動車に目を丸くして驚いていた。


高層ビルや派手なTシャツ姿の人々にも、驚いていた。
誰も軍帽をかぶっていず、モンペ姿の女性も居ないので、
不思議に感じているだろう。


彼がこれ以上不安にならないように、
なるべく昔風レトロな飲食店を探し、
「若いおじいさん」をそこへ連れて入った。




彼にこれまでのいきさつを説明しなければならないが、
とりあえず食べてもらって、空腹を癒してから話すことにした。


これから、彼はこの現代で生きて行かねばならない。
タイムマシンは、おそらく爆心地だろう。
もう壊れてるだろうから、彼が「廣島」に戻ることもない。


タイムマシンを操作していたのは誰だったのか?
操作者は、もちろんアメリカの科学者だろう




爆心地からほど遠い、広島郊外から無線の遠隔操作で、
原爆投下時間に合わせ、
この若者(紺野君のおじいさん)を移動させたのだろう。。


今日、紺野君は広島原爆式典におばあさんと出席した。
おばあさんはこの若者の奥さんなんだ。
あぁ~・・なんて説明すればいいのか。


これから先が大変だ。
きっと世間の人は、オレとこの来訪者を、
「大嘘つきの頭のイカれた野郎」と思うに違いない。




そんな事を考えていたところ、紺野君から電話が掛かってきた。


紺野君
「城戸さん、今日ね、原爆資料館へ行ったんですよ。
変わったものが展示されてました、びっくりです。


爆心地から出てきたそうですが、
ドロドロに溶けて固まったプラスティックの
マネキン人形の中から手紙が出てきた。・・って。


その中にはこう書かれていました。」
   ↓

“ 紺野君のおじいさんは生きている。21世紀の日本で。”



オレ
「誰が書いたか、ここに誰が居るか、今度説明するよ。
 あ、メル友と広島で会う・・って言ってたよね。。。
 それいつ・・?」


紺野君
「明日ですよ~」


オレ
「そっか。じゃ楽しんできて。みやげもよろしくね♪」


~広島へ帰る前に ・・全巻 終了

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