SF小説「広島へ帰る前に」第3巻

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 四次元に送るマネキン


この小説は連続ものです、
初めての人は、第1巻からどうぞ(^ ^)
   ↓
広島へ帰る前に:第1巻

すでに第1巻を読んだ人は、第2巻からどうぞ
   ↓
広島へ帰る前に:第2巻


アパートに帰って休んでいると、紺野君から電話が掛かってきた。。
「城戸サン、今夜は僕のアパートの近所の神社で祭があるんです、
もうじき始まりますよ~、夜店も沢山あるんで、来てくださいよ~。」


~オレは行ってみた。




提灯がいっぱいぶら下げられて、
石の灯籠にはローソクが灯され、
夏の夜がぼんやり美しく輝いている。


紺野君以外にも、会社の事務員さんも来ていた。
3人でお好み焼を食べたり、型ぬきしたり、
くじを引いて遊んだ。




お面が並んでいて、紺野君が立ち止まった。


紺野君は

「へえ~・・精巧にできてるなぁ~、
 僕らマネキン職人には参考になりますねぇ。
 あ、織田信長のお面かあ。愛知みやげに、これ買って行こう。」


ゴムで出来た、織田信長そっくりのお面だった。
陶器で作られてるのかと思うほど、キメ細かく作られているため、
値段もそれなりだが、それにしても人間そのものの顔立ちだった。

うぅ~ん、信長ってハンサムだったんだなあ。、。




紺野君が言った。

「城戸さん、明日の夜行列車で、広島に帰ります。
 6日の朝に着く予定です。
 新幹線の方が断然早いんだけど、
 夜行の方が旅気分味わえるから。」


オレは
「へ~っ、8月6日かあ。。ちょうど広島の原爆記念日だよね。」


紺野君
「はい、原爆記念日の慰霊祭があるんですけど、参加するんです。
 今年はおばあさんが慰霊の舞いを踊る大事な慰霊祭だから、
 ぜったい来い・・って、おばあさんが言うもんで。」


「そうなんだ、じゃあ間に合うように行ってあげなよ。」…とオレ。

紺野君
「ええ、おばあさんは舞踊の先生してるんだけど、
 それでもそんな大事な場で舞いを披露するのは不安なんだそうで、
 とにかく舞台の脇で誰かついて居て欲しいんだそうです。」




話を聞きながら、オレは紺野君にまつわる不思議な現象や、
フィラデルフィア実験について考えていた。


しかし、今夜は事務員さんも隣に居るし、二人に “ 頭が変” と思われてはイヤなので、
その話はしないことにした。


その夜、紺野君や事務員さんと分かれ、
オレはアパートに帰ったあと、
ベッドで横になってる間も、じっと考え続けていた。
そしてハッとして、ベッドから起き上がった。




もしメモ帳に書かれていた通り、
「4度目ハ実物デ完了」・・に従うなら、

紺野君と紺野君のおじいさんがタイムトリップで入れ替わるのか?


それはいつなんだ!? いつ、2人が入れ替わる?


あさってが広島原爆記念日の朝だ・・。
入れ替わるなら、そのときかも知れない。




原爆投下直前の爆心地のようすを語れる人を、この世に残すため・・。
その生き証人としておじいさんを、この21世紀に移動させるのだろうか?


~いけない、そしたら、紺野君と会えなくなる。
紺野君が原爆に遭ってしまう!!!


困ったぞ・・どうすりゃいい、?
落ち着くんだ、落ち着け、


昨日、図書館で読んだ旅客機の一時的な消失。
あの時、乗客・乗員ともに何事もなく着陸したよな。


かたや、駆逐艦エルドリッジ号の場合、凄惨極まる事故になった。
その違いは何なんだろう?




ひょっとして、旅客機のケースは、
高度に関係しているのかも知れない。
着陸準備体勢に入ってすぐ・・だったから、
上空1000mほどだろう。


地上とは違い、
無線通信や電話回線などの妨害電波がない、
上空1000mという環境。


そのおかげで、電磁波も妨害されず、また機器の暴走もなかった。




そして乗客・乗員の誰も壁や機器に融合する事なく、
また体の一部が欠損する事もなく、
無事に地上へ着陸できた。


そして紺野君から借りたあのメモ帳には

「似テイル者同士ヲ転移スル事デ、融合ハ避ケレル・・」

~と書かれていた。


フィラデルフィア実験で起こったような、
人と壁が融合してしまう事故、人体を損傷する事故。


高度がなく妨害電波の多い地上においては、
どうやらビジュアルがそっくりな者同士を入れ替わらせれば、
あんな事故は防げるって事だろう。


その証拠に、似たメモ帳やそっくりな帽子で、
タイムトリップが成功している。




なるほど、じゃ紺野君のおじいさんに似ている者が、
もう1人居ればいいんだ。


その役は紺野君じゃない、マネキン人形だ。
そいつに爆心地へ行ってもらおう!


オレは急いでマネキン工場へ向かった。
しかし、夜間は警備員さんが仮眠をとっている。
だけどこの警備員さんは一度寝だすと、数時間は起きないんだ。。
それでもオレは慎重な足取りで、そろ~っと警備室に入った。


床にある空き缶や小箱に自分の足が当たらぬよう、
ゆっくりと狭い警備室を進んだ。。




そしていつも鍵を置いている机の上の鍵ボックスに手をやり、
工場の鍵をちゃっかり借りてきた。


オレと紺野君の担当の部屋、マネキン製作ルームに入り、
紺野君のおじいさんの写真を見ながら、
あたまの形・手の形を、石膏で製作してみた。




石膏の人体が出来上がると、
それをビニールの溶けたドロドロの液の中に寝かせた。


3時間、巨大な冷蔵庫で冷やす。
ビニールの型が固まった。これがマネキン人形の型だ。




今度はいよいよマネキン本体になる。
溶けたプラスティックを、ビニールの型の中に流し込む。


2時間、冷蔵庫に入れた。
そして・・出来上がった!


オレは警備員に見つからないよう静かに車に積み、
アパートへ持ち帰った。



朝がきた、
夕べの徹夜の “秘密のマネキン製作” のせいで、とても眠い。

夕べの出来映えをもう一度確認。。。
まゆ毛など、顔立ちも紺野君のおじいさんそっくりに描けている、満足!

今日は仕事が休み、だからもっと眠ることも出来たが、
あまりだらしない休日にはしたくない、




眠いながらも、午前中は部屋そうじ、
そしてベランダそうじをし、
午後からはレンタルビデオを借りて、
カレーを食べながら、洋楽鑑賞をした。


そうこうしてるうちに夜も更けていった。


「明日は早番で仕事だな。。もう寝なきゃ。」
ベッドに潜り込んだ、暑いので、扇風機をかけて眠りに入った。
蚊取り線香も忘れずにつけて。。。スヤスヤ…zzz


~つづく・・
  ↓
「広島へ帰る前に」最終回へ進む(◕_◕)

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